予防歯科

「歯医者さんは、歯が痛くなってから行くところ…?」
「何度も虫歯になるのは、体質だから仕方ない…」
「歯周病ってよく聞くけど、自分には関係ないかな…」
もし患者さまが、このように感じているなら、それは少し前の常識かもしれません。
かつて歯科医療は、虫歯や歯周病になってしまった歯を「治療する」ことが中心でした。
しかし、どれほど素晴らしい治療をしても、一度削ったり、失ったりした歯は、元には戻りません。
そのため、当院では、虫歯や歯周病になる前、あるいは初期の段階でリスクを発見し、患者さま一人ひとりに合った予防プログラムを提供する「予防歯科」に全力を注いでいます。
特に、アメリカ発の先進的な虫歯予防プログラム「CAMBRA(キャンブラ)」を導入し、科学的なデータに基づいて患者さまのリスクを評価。
さらに、歯科衛生士による拡大鏡を用いた精密なクリーニング、唾液検査(シルハ)や細菌検査(ミルキン)、そして患者さまご自身が実践できるブラッシング指導や生活習慣のアドバイスを通じて、虫歯や歯周病のない健康なお口をサポートします。
アメリカ発の先進予防プログラム「CAMBRA(キャンブラ)」

「なぜ私は虫歯になりやすいのだろう?」
「どうすれば、もう虫歯になりたくない」
そんな疑問や願いをお持ちではありませんか?
当院では、患者さまの虫歯リスクを科学的に評価し、それに基づいたオーダーメイドの予防計画を立案するために、アメリカで開発された革新的な虫歯予防プログラム「CAMBRA」を導入しています。
CAMBRAは、カリエス(虫歯)のリスクを評価し、そのリスクに応じた治療や治療計画を提供する予防プログラムです。
単に「虫歯があるか、ないか」を見るだけでなく、虫歯の「原因」に焦点を当て、患者さま一人ひとりが持つ虫歯のリスク因子を多角的に分析します。
従来の歯科医療が「虫歯を治療する」ことに主眼を置いていたのに対し、CAMBRAは「虫歯になる前に防ぐ」「虫歯の進行を止める」ことを目的としています。
CAMBRAの主な評価項目
CAMBRAでは、問診、口腔内診査、そして唾液検査(カリスクリーン)などを組み合わせ、以下の項目を評価します。
むし歯菌の活動性
唾液検査(カリスクリーン)で、むし歯の原因となる細菌(ミュータンス菌など)がどれだけ活発に活動しているかを測定します。
この菌が、ATP(アデノシン三リン酸)という物質を活動時に多く発生させるため、このATPを測定することで、むし歯菌たちの活動度を数値化できます。
ローリスク |
1年以内に新たなむし歯が発生する確率は23.6% |
ミドルリスク |
1年以内に新たなむし歯が発生する確率は38.6% |
ハイリスク |
1年以内に新たなむし歯が発生する確率は69.3% |
エクストリームリスク |
1年以内に新たなむし歯が発生する確率は88.0% |
唾液の量と質
唾液の分泌量や、酸を中和する力(緩衝能)を測定します。
唾液の量が少なかったり、緩衝能が低かったりすると、虫歯のリスクが高まります。
食生活・生活習慣
糖分の摂取頻度や、間食の習慣、口腔清掃の習慣などを詳しくお伺いします。
過去の虫歯治療歴
過去に多くの虫歯治療歴がある方は、リスクが高いと判断されます。
フッ素の使用状況
フッ素入り歯磨き粉やフッ素洗口液の使用状況などを確認します。
保護要因の評価
フッ素の利用状況、唾液の分泌量や質、キシリトールの利用、抗菌剤の使用など、虫歯を抑制する要因も評価します。
CAMBRAに基づく「あなただけの」予防プログラム
CAMBRAの最大のメリットは、この詳細なリスク評価に基づいて、患者さま一人ひとりに最適なオーダーメイドの予防プログラムを提供できる点です。
低リスクの方
定期検診とクリーニング、適切なブラッシング指導を継続します。
中・高リスクの方
定期的なフッ素塗布や、高濃度フッ素配合歯磨き粉の使用、キシリトールガムの推奨、食生活のアドバイスなどを重点的に行います。
エクストリームリスクの方
必要に応じて、より強力な抗菌剤の使用や、専門的な集中ケアプログラムをご提案するなど、積極的な介入を行います。
精密な診断を支える唾液検査(シルハ)と細菌検査(ミルキン)
CAMBRAプログラムの中心となる唾液検査に加え、当院ではさらに詳細な口腔内環境の把握のため、以下の検査も活用しています。
シルハ:多項目にわたる口腔内のリスクをチェック

シルハは、虫歯菌、酸性度、緩衝能、アンモニア(歯周病リスク)など、多項目にわたる口腔内のリスクを同時に測定できる唾液検査システムです。
グラフで視覚的に表現
各項目がグラフで表示され、ご自身の口腔内の状態が正常範囲内にあるか、どの項目でリスクが高いのかを視覚的に捉えることができます。
総合的なリスク評価
虫歯だけでなく、歯周病や口臭のリスクも評価できるため、総合的な口腔ケアプランを立てる上で役立ちます。
mil-kin(見る菌:ミルキン):口腔内の細菌を「目で見て」確認

mil-kin(ミルキン)は、患者さまの唾液を採取し、その場で顕微鏡を使って口腔内の細菌(歯周病菌など)をリアルタイムで観察できるシステムです。
ご自身の目で細菌の動きを確認
採取した唾液をモニターに映し出すことで、患者さまご自身の口の中に存在する細菌が、実際に動いている様子を「見て」確認できます。
衝撃と理解を深める体験
「こんな細菌が口の中にいるのか!」という驚きは、患者さまの予防意識を劇的に高めます。
視覚的なインパクトは、言葉だけの説明よりもはるかに強い説得力を持っています。
歯周病菌が多い方には、その菌を減らすための具体的な歯磨き指導や、歯周病治療の必要性をご理解いただくのに役立ちます。
これらの検査を組み合わせることで、患者さまのお口の現状と潜在的なリスクを徹底的に「見える化」し、オーダーメイドの予防プログラムや治療計画を提案することができます。
個別指導で「磨ける」を実現するブラッシング指導:染め出し液で「見える化」
「毎日歯磨きしているのに、虫歯になるのはなぜ?」
その答えは、「磨いている」と「磨けている」は違うという点にあります。
当院の予防歯科において、ブラッシング指導は非常に重要な柱の一つです。
染め出し液をほぼ毎回使用:磨き残しを「見える化」

ブラッシング指導の際には、ほぼ毎回、染め出し液を使用します。
染め出し液は、歯に残ったプラークを赤や紫に染め出すことで、どこに磨き残しがあるかを患者さまご自身が目で見て確認できるようにします。
単に歯磨きの方法を教えるだけでなく、患者さまがご自身で「磨ける」ようになり、セルフケアの習慣を身につけていただけるよう、親身になってサポートします。
視覚的なインパクトと理解
「こんなに磨き残しがあったのか!」という視覚的なインパクトは、患者さまの磨き残しへの意識を劇的に高めます。
改善点の明確化
染め出された部分を重点的に磨く練習をすることで、ご自身の弱点を知り、効率的に改善していくことができます。
患者さまへの配慮
染め出し液の使用は、患者さまによっては抵抗がある場合もございます。
そのため、事前に必ず使用の可否を確認し、ご希望されない方には無理に勧めたりはしませんのでご安心ください。
患者さまのご意向を尊重し、最適な方法で指導を行います。
歯科衛生士による精密クリーニング(PMTC):拡大鏡で徹底的に

毎日の歯磨きだけでは落としきれない、歯と歯の隙間や、歯周ポケットの奥に付着した汚れ、そしてバイオフィルム(細菌の集合体)は、専門的なクリーニングが必要です。
当院のPMTCは、熟練した歯科衛生士が、拡大鏡を用いて細部まで確認しながら行うため、患者さまの歯を傷つけることなく、隅々まで徹底的にクリーニングできます。
歯科衛生士の拡大鏡使用
当院の歯科衛生士は、歯石除去などのスケーリング&ルートプレーニングにおいて、拡大鏡を装着して処置にあたっています。
これにより、肉眼では見えにくい歯の細かな凹凸や、歯と歯ぐきの境目、歯周ポケットの奥に隠れた歯石やプラーク、バイオフィルムまで鮮明に確認できます。
バイオフィルムの徹底除去
歯の表面に強固に付着した細菌の膜(バイオフィルム)は、歯磨きだけでは除去できません。
専用の器具とペーストを用いて、このバイオフィルムを徹底的に除去します。
歯石の精密除去
歯石は、プラークが石灰化したもので、歯ブラシでは除去できません。
歯石の表面はザラザラしているため、さらにプラークが付着しやすくなり、虫歯や歯周病を進行させます。
超音波スケーラーや手用スケーラーを用いて、拡大視野下で歯石を丁寧に除去します。
着色の除去
コーヒーや紅茶、タバコなどによる歯の表面の着色をきれいに除去し、歯本来の白さを取り戻します。
これにより、見た目の美しさも向上します。
歯面の研磨
最後に歯の表面をツルツルに磨き上げます。
歯面が滑らかになることで、プラークが付着しにくくなり、虫歯や歯周病の予防効果を高めます。
フッ素塗布:歯質を強化し、虫歯に強い歯へ

フッ素は、歯の再石灰化を促進し、歯質を強化することで、虫歯になりにくい歯を作る効果があります。
当院では、定期検診の際に、高濃度のフッ素を歯に塗布します。
お子さまだけでなく、大人の虫歯予防にも非常に有効です。
歯質の強化
フッ素が歯に取り込まれることで、歯の表面のエナメル質が酸に溶けにくい強い構造(フルオロアパタイト)に変化します。
再石灰化の促進
初期虫歯などで溶け出した歯の成分が再び取り込まれる(再石灰化)作用を促進します。
細菌の酸産生抑制
虫歯菌の活動を抑制し、酸の産生量を減少させる効果も期待できます。
シーラント:奥歯の溝を「予防の壁」で守る

生えたばかりの永久歯や、乳歯の奥歯の咬み合わせ面には、深く複雑な溝があります。
この溝は、歯ブラシの毛先が届きにくく、食べかすやプラークが溜まりやすいため、虫歯になりやすい部位です。
シーラントは、この溝を歯科用のレジン(樹脂)で埋めて、物理的に細菌が入り込むのを防ぐ予防処置です。
溝を平坦にすることで、歯ブラシが届きやすくなり、虫歯菌が繁殖しにくい環境を作ります。
特に生えたばかりの歯に有効: 歯の質がまだ柔らかいお子さまの生えたての永久歯(特に奥歯の第一大臼歯や第二大臼歯)に非常に効果的です。
ケアグッズや生活習慣のアドバイス:日常から予防をサポート

予防歯科は、歯科医院でのプロフェッショナルケアと、患者さまご自身のセルフケアが両輪となって初めて効果を発揮します。
当院では、患者さま一人ひとりの口腔内の状態やライフスタイルに合わせて、効果的なセルフケアのためのアドバイスを行っています。
適切な歯ブラシの選び方
歯並びや歯ぐきの状態に合った歯ブラシの種類(ヘッドの大きさ、毛の硬さなど)をご紹介します。
補助的清掃用具の活用
歯間ブラシやデンタルフロス、洗口液など、歯ブラシだけでは届かない部分をケアするための補助的清掃用具の選び方や使い方を丁寧にご指導します。
食生活のアドバイス
虫歯になりにくい食習慣や、だらだら食べを防ぐポイントなど、日々の食生活で実践できるアドバイスを提供します。
生活習慣の改善
歯ぎしりや食いしばりの有無、喫煙習慣など、お口の健康に影響を与える生活習慣についてもヒアリングし、必要に応じて改善のアドバイスや、ナイトガード(マウスピース)の作製なども提案します。